選択:類似業種比準価額×0.25+純資産価額×0.75
2.本研究報告の概要
〔株式の価値とは〕
株式は、法律上においては、均一的に細分化された割合的単位の形をとる株式会社の社員(株主)の会社に対する法律上の地位(株主権)を表象したものである一方、経済上においては、動産や不動産等の財産と同様に、財産としての価値も有しており、しかも、近年では株式の交換取引にとって必要な金融証券市場の充実・拡大とともに、その財産的安定性を更に増大させていると言えます。 株価評価を引き下げる方法
しかしながら、株式が、他の財産と同様に何らかの価値を持った財産であることには疑問はないものの、取引相場のある上場株式についてはその価値の変動性が、取引相場のない非上場株式についてはその価値の不確実性が、株式の評価を困難なものにする重大な要因となっていることは明らかです。
◆主観的価値
物の主観的価値とは、「対象物が特定の主体との関係において有する価値」である。
すなわち、物の価値は、評価目的や評価状況等を超越した価値であり、それを所有している人のみに価値があり、その人の価値観によって抽象的に評価されるものである。
◆客観的価値
物の客観的価値又は客観的交換価値とは、「評価の対象物を金銭と交換することを前提としたときに、体現されるであろう客観的・対世的価値」である。
すなわち、市場においてどれだけの物に交換できるか、又は交換した場合に、どれだけの金銭によって評価されるかという市場における金銭的な取引価額を意味している。
◆使用価値
物の使用価値とは、物の使用に供することによって需要を満たすものの有用性のことである。
すなわち、使用に供することによって価値があり、使用者の主観が入るという点では主観的価値と共通点があると言えるが、使用に供されなければ価値がないという点では主観的価値とは異なる。
Ⅱ 財産評価基本通達における取引相場のない株式の評価について
〔法人の判定について〕
①株主の判定・・・同族株主のいる会社か、いない会社かの判定
②会社の規模の判定・・・大会社・中会社・小会社の判定
〔取引相場のない株式の評価方法〕
以下のそれぞれについて現在の計算方法と評価上の論点について検討しています。
①類似業種比準価額
②純資産価額
③配当還元方式
〔特定の評価会社〕
以下の会社における現在の評価方法と評価上の論点について検討しています。
①比準要素1の会社
②株式保有特定会社
③土地保有特定会社
〔種類株式の評価について〕
2006年5月に施行された会社法により、多種多様な種類株式を発行することが可能となりましたが、現在の種類株式の評価方法としては、配当優先株式、無議決権株式及び社債類似株式の3つのみが示されているだけで、その他の種類株式については普通株式と同様の評価を行うこととされています。ここでは、種類株式についての評価上の論点について検討しています。
Ⅲ 評価会社における貸借対照表上に関する論点
〔財産評価基本通達に定められている主な評価方法〕
純資産価額を構成する個々の資産及び負債の評価に当たっては、それぞれの資産及び負債を財産評価基本通達で定める価額で評価する必要があります。
財産評価基本通達で定める価額は、「その時の客観的な交換価値を示す価額」を実務上可能な方法で、しかもなるべく容易かつ的確に算定するという観点から、財産の種類の異なるごとに、それぞれ財産の本質に応じた評価方法により定められています。
〔事業の円滑な承継に支障を来すという論点〕
事業を承継する場合、一般的には後継者が株式を承継するという形で事業を承継するため、自社の株式の評価額が大きな金額に上ると、それに伴い相続税や贈与税も多額になります。特に中小企業の場合、将来のリスクに備え、利益を配当に回さず内部留保している場合が多く、よって純資産価額が高くなる傾向にあり、また、純資産価額による評価を行うと会社の業績にかかわらず、所有する不動産や有価証券などの時価が値上がりすれば、必然的に純資産価額も値上がりすることになるため、このような場合に円滑な事業承継に支障を来すことになります。
〔純資産価額を構成する貸借対照表項目における論点〕
純資産価額の算定上、資産についてはその時の客観的な交換価値を示す価額として、売買実例価額、調達価額、販売価額、複利現価などにより、有形、無形にかかわらず、また、有償、無償にかかわらず一律に評価することになり、この場合、処分可能性、換金可能性等は考慮されず、実務的に問題となっています。また、負債について財産評価上は法人税法上、損金算入されない引当金や資産除去債務などは負債として扱わないため、評価上問題となっています。さらに、純資産価額の評価に際しては、各項目の評価の差額などに着目し、意図的に評価を下げることが可能となることから、租税回避防止の観点により、一部特別な取扱いがなされ、その場合には評価の公平性に欠けるという問題があります。
〔特殊な場合における純資産価額に準じた価額での評価の論点〕
類似業種比準価額は、類似業種の株価、1株当たりの配当金額、1株当たりの年利益金額、1株当たりの純資産価額を基礎とし、類似業種の株価は国内で上場している会社が標本となっており、又1株当たりの配当金額、1株当たりの年利益金額、1株当たりの純資産価額は、課税時期直前1年間が指標の前提となっています。そのため、指標の前提に合わない会社は、類似業種比準価額が算定できないため、純資産価額で評価することが求められ、実務上、評価の公平性の観点から問題となる場合が多くなっています。
Ⅳ その他の論点
その他の論点として、以下の2点が検討されています。
①事業承継税制における株式評価について
②売買データベースの設置について
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